サハラ砂漠マラソンMDS体験記〜食料編〜
日本酒プロデューサーの石坂晏敬です。
2019年のサハラ砂漠マラソンを終えて来年以降の参加者のため、
自分のために記録を残すことにする。
食料について、大会直前まで悩んでしまった。
というよりも直前まで真剣に向き合わなかったと言ったほうが正しい。
準備するまでに考えた容易に至った流れと
それがどう機能したかをまとめたのでぜひご覧ください。
サハラ砂漠マラソンMDSの食料ルールについて
まず、サハラ砂漠マラソン(MDS)は食料にルールが存在する。
ルールは簡単でステージレース7日間を1日2,000kcal以上。
計14,000kcal以上の食料を持ち運ぶことが条件である。
大会当日に書類に食料の内容を記載して荷物チェックの際に
食料も確認される。(用紙を撮影するのを忘れてしまった。)
と言っても当日は書類に目を通されて、
「ここに書いてあるものは全て持っていますか?」
と聞かれ、イエスと答えて終わる程度のものであった。
要は自己責任ということである。
このルールに基づいて準備を行ったが次は準備について悩んだ点についてを記す。
嗜好派?軽量化派?コンパクト派?炭水化物派?脂肪フルーツ派?
14,000kcalの食料はそれなりの重さと容量となり、荷物の大半を占める存在だ。
したがって、各選手が一番最後まで悩むのが食料では無いだろうか?
ポイントとしては以下の4点が挙げられる。
- 嗜好 毎回の食事をこの上なく楽しみなものにする。ようは美味しいものということだ。
- 軽量化 20〜30リットルのザックで全ての荷物を運んでいく。
重ければ重いほど負荷がかかるわけだ。
軽量化は一つの大きな要素となる。
そこで100gあたりのカロリー(kcal)が基準の要素となる。
- コンパクト化 軽量化と同様にコンパクトに収めることも重要となってくる。
限られたスペースにいかにうまくコンパクトに収容するかである。
かさばるものは袋から出してジップロックなどの袋に更にコンパクトに収納し直す。
- 成分 食料の成分である炭水化物、たんばく質、脂肪などのことである。
通常で考えれば、行動力に直結する炭水化物を多くするのが一般的なのだろう。
ただ、一週間炭水化物だけを食べ続けるとはあまりにも内蔵に優しくない。
ということがまずある。たんばく質とビタミンの補給も考えたい。
- エネルギー源 炭水化物にするか脂肪にするかという点だ。すなわち、糖代謝かミトコンドリア代謝かということだ。
炭水化物なら米や麺を用意する。
脂肪ならばナッツ系を中心にしたものとなる。
あとは塩分。汗で相当量の塩分が出ていってしまうため、それを補う食材ということ。
ただし、大会本部から塩タブが与えられたり、自分で用意した塩などで補うことはかのうである。
今回の食料はコンパクト化を最優先
これらの要素の中でコンパクト化を最重要項目とした。
結果的にコンパクトにまとめられる脂肪成分のものを中心とした。
脂肪を燃料にするためには
日々ケトン体質にしておかなければエネルギー化されないというリスクがある。
ただ、エネルギー化できれば脂肪は体内保存料が多い。
だから、うまく機能すればレース中にエネルギー切れになることはなくなる。
これらからナッツがふんだんに使われた以下の2つのアイテムを主食とした。
- トレイルバターBiGサイズ
- Larabar(ナッツバー): ナッツとドライフルーツから作られたバー
▲トレイルバタービッグサイズ。一本1,200円ととても高価なのは難点である。
これらはナッツからのたんばく質とフルーツからのビタミンも期待できる。
舌の楽しみという観点では必ず物足りなくなることが想定ができたが、
コンパクトさとすぐに食べられる利便性を優先することとした。
最終的な食材は以下となる。
Calorie (kcal) | Weight(g) | kcal/100g | ||
棒ラーメン | Noodle | 1200 | 343 | 349.9 |
カシュークッキー | Cashew Cookie | 3520 | 768 | 458.3 |
TrailButter | Trail Butter | 7600 | 1280 | 593.8 |
白米 | Rice | 732 | 200 | 366.0 |
カレー | Curry | 418 | 74 | 564.9 |
shotz | gel Shotz | 819 | 315 | 260.0 |
きびだんごともち | Rice Cake | 1160 | 300 | 386.7 |
合計 | total | 15449 | 3280 |
お米と棒ラーメンをご褒美品と位置づけて、
基本はトレイルバターとLarabarを主食としてで過ごす。
行動食はジェルのshotzときびだんご。
これにプラスして日々毎日欠かさず飲んでいる
ビタミンBとCおよびミヤリサンと百草丸のサプリメントを持つ。
特にビタミンCは日焼けを体内から回復させてくれることに期待。
あとは大会本部から渡された塩タブと水。
リスクとしてはどこで甘い物が受け付けられなくなって
塩っぱいものしか受け付けなくなるかである。
これは過去に自身が過去のウルトラトレイルのUTMBやUTMFにて
後半、ジェルなどの甘いものを身体が一切受け付けなくなった記憶があるためだ。
今回は塩分をしっかりと補給し、追い込んで走らないつもりでいるので
この点は問題ないだろうと想定している。
大会前々日の夜に会場に着き、前日に荷物申請をして
これで7日間を過ごすと決めて大会に望んだ。
砂漠の灼熱は想像以上。思いの外早く、甘い物を受け付けなくなる。
▲前日まで食事が配給され、こんなお食事
当日の朝からは時給生活がスタートする。
お米は一つ日本酒作りのために使用してしまった。
ステージ1、ステージ2は気候に慣れるためと
醪のボトルを揺らさないようにするために
全ての工程を走らずに歩いて過ごすことを徹底した。
そのため、身体への負荷はそれほどかからずに気候との戦いのみで終えた。
初日はトレイルバターとバーのみで過ごそうと思っていたが
テントのみんなが豪華にご飯を食べている姿を見て
自分も褒美としてとっておくつもりであったカレーライスを食べてしまった。
朝はトレイルバターをしっかり一本(760kcal)とってスタートした。
ステージ3の朝まではこのスタイルで過ごせた。
ステージ3からしっかりと走ることに決めてペースを大幅に上げた。
ステージ3はほぼ全区間を走る形をとったが
最後の6-7kmがDunes(走りづらい砂地)で
大きく足を砂に取られてとてもつらい区間となった。
そのため、ゴールしてからの疲労感が半端なく
塩分と水分の補給が全く追いついていない状況を作ってしまった。
その結果、トレイルバターとナッツバーを身体が一切受け付けなくなってしまった。
口に入れても一切のどに入っていかない。
とにかく塩っぱいものが欲しくてラーメンやラーメン。。。。
棒ラーメンには大量に持ち込んだ糸島の塩を入れて食べるような状態となる。
これ以降、トレイルバターとナッツバーを食べられなくなってしまったため、
トレイルバターは捨てると言う形で日本人の食料が足りない方々へあげる形をとった。
トレイルバター10本持っていった内、5本を手放すことに。
ナッツバーは6つを手放すことに。
トータル 約5,000ckalを手放したこととなる。
(今思えば、塩っぱい食事と交換をしてもらえばよかったなぁと後悔、、、、)
この先はあてにしていた主食のトレイルバターとナッツバーがだめになったので
残りの棒ラーメンを夜食に大事に食べて
朝と昼は残りのshotzときびだんごで過ごすことを決意した。
明らかにカロリー不足だが、体内に保存されているエネルギーに期待して
動くことを決めた。
ステージ4はオーバナイトと言われる76kmのコース。
普通に考えたら、ハンガーノックになり動けなくなることが容易に想像できる。
朝にトレイルバターを無理やり口の中に入れて20-30分かけて半分程度食べてスタートラインへ。
ステージ3の疲労が若干残っている感があるために走りはしたがスロースタート。
しっかりと黙々と歩き続ける。
CP3〜CP4の間のスタートしてから7-8時間経過したくらいで
身体が急に動かなくなってきた。
「あ〜この大会はじめての燃料切れ感だ、、、、」
CP4までなんとかがんばり、きびだんごを水で流し込み、
さらに前日もらった混ぜご飯に水を入れてCP4をスタート。
CP4をスタートしてから1時間経過した段階で混ぜご飯が完成したので
歩きながら、混ぜご飯を食べるという荒業で時間を有効に使う。
この混ぜご飯とCP4で食べたきびだんごでゴールまで持った。
このステージ4は完全に胃の調子がおかしく、
一日中ゲップが出る状態が続いていた。
胃液が過剰に出てしまっている状態だったのだろう。
CP5とゴール地点で出された甘〜いお茶も
脳では美味しいと感じつつ、胸焼けしてしまいほとんど飲むことができなかった。
ステージ4を日にちを超える前にゴールでき、しっかりと睡眠を取り、
翌日もゆっくりとダラダラと身体を休ませる事に時間を費やせたので
体調もある程度は戻り、棒ラーメンで塩っぱい食べ物でしっかりと補給して
最終ステージ5のフルマラソンステージに臨んだ。
この日の朝はきびだんご半分のみ。レース中にshotzを一つ。
これで過ごすと決めて、無事に過ごすことが出来た。
総括
今回の自分の作戦として用いた主食である
トレイルバターとナッツバーは結果としては完全なる失敗であった。
想定以上に早い段階で甘いものが受け付けられなくなったことと
予想以上にナッツの脂が体内に入っていかなくなってしまった。
持っていったものが身体に入っていかないという最悪の結果であった。
ただ、僕の周りの人はトレイルバターが美味しく、十分な補給になっている人もいるので
体質に合うかという部分と他の食材との組み合わせ方なのかなと感じることが出来た。
このようなロングステージレースに臨む際には
- 事前に追い込んだ形で食す経験をしっかりと行うこと
- 色々な味のものを用意してまずは体内に入れられることを最優先に考える事
を心がけて次回以降のレース(出場するかは不明だが)に臨むことにしたい。
内臓さんに今回も感謝
今回も内臓さんにはだいぶ負担をかける形となってしまった。
レース後の腹回りや体全体が一回り小さくなっていたので
相当体内の筋肉や内臓自体に蓄えられているエネルギーを使ってしまったことが伺える。
レース後はたんばく質とビタミンを徹底的に取り込んでいる。
まずは身体をしっかりと回復させねば。